エリート御曹司が花嫁にご指名です
「ここは支払い済みです。では」

 サラッと言ってのけた桜宮専務は私の腕を掴んだまま、出入口に向かって歩き始める。

「あっ!」

 掴まれている私はその場で反抗することもできずに、白石さんに急いで頭を下げてついていくしかなかった。
 
 人のいないところで文句を言おうと思いながら。
 
 ラウンジの出入口では、支配人とおぼしき黒服の男性に至極丁寧に頭を下げられた。
 
 少し歩いた人気のないところで、私は足をグッと踏ん張った。

「待ってください!」

 桜宮専務は立ち止まったが、私を掴む手はそのままだ。

「話がある。上に部屋を取ってあるんだ。ゆっくり話そう」

「へ、部屋を?」

「そうだ。ギャラリーに聞かせる趣味はないからな」

 そう言って、否応なしにやってきたエレベーターに乗せられてしまった。


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