エリート御曹司が花嫁にご指名です
「具合が悪いのでしょうか?」
「いや、どうして?」

 汐里に心配されるのもいいもんだな、と自己満足する俺だ。彼女は、必要なら代行業者を呼ぶから飲めばいいと言う。

「頭を悩ませる秘書がいるからな。酒で楽しむどころじゃないんだ」

 嫌味を言って少し苛めたくなるのは、汐里が可愛すぎるからだと気づく。

「お酒を飲まない理由にはならないかと……」
「そんなに飲ませたいのか? 俺が潰れたらどうするんだ? 秘書として自宅へ送り届けてくれるのか? それとも部屋を取って介抱を?」

 部屋を取って介抱は、言いすぎたか。

 汐里は目を真ん丸くさせている。

「クッ。そんなに驚くなよ。大きな目がもっと大きくなっている」
「じょ、冗談はやめてください。もちろん代行業者を呼んで、ご自宅へ送らせていただきます」

 動揺している様子の彼女は、手元のシャンパンをゴクゴクと一気に飲み干す。

「お、おい」
「大丈夫ですよ。これくらい」
 
 空になったグラスを目ざとく見ていたレストランスタッフが、すかさずなにを飲むかを聞きに来る。
 
 汐里は同じものを頼み、待たされずにグラスがシャンパンで満たされる。

「まあいい。俺が送っていくから、好きなだけ飲めよ」

 俺は常務に話しかけられ、意識が汐里から離れた。

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