エリート御曹司が花嫁にご指名です
「バーで酔っぱらいに絡まれた女性を助けただけだ」

 いとも簡単に言ってのけた桜宮専務は、すっくとソファから立ち上がった。

 壮兄は私たちから離れ、部屋の隅にある洗面台で手を洗っている。

「そんなっ。今はナイフで刺される時代ですよ? 無理はしないでください」
「わかっている。小言はごめんだ」
「専務……」

 私はまだ心臓が暴れているというのに、桜宮専務はまったく解せず、気にしていない様子だ。

「壮二、助かった。じゃあ」

 戻ってきた壮兄に桜宮専務は声をかけて、出ていこうとした。

「タクシーを呼びますから、座ってください」
「そうだよ。優成さん、しおりんに任せて。腰かけて、夜食を食べよう。いつも食べきれないくらい多いんだ」

 壮兄の誘いで、桜宮専務はすんなりソファに戻った。

 お夜食の入ったバッグのジッパーを開けて、中のものをテーブルに出しているのを見ながら、私はスカートのポケットからスマホを取り出して、タクシー会社へ連絡した。

「ほら。おにぎりが五つも入っているとか」

 文句を言いながら、壮兄は対面の桜宮専務におにぎりをひとつ手渡す。

「食べきれなかったら、スタッフにあげればいいでしょう」
「はいはい」

 壮兄はラップを取り去って、おにぎりにパクッとかじりつく。桜宮専務も同様に食べ始める。その姿にホッとする私だ。

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