エリート御曹司が花嫁にご指名です
「彼女はあなたと付き合っていたんですか?」
「いや、恋人ではない。だが、長く付き合っている大事な人だ」
 
 俺は汐里に手を差し出す。

「汐里、立つんだ」
「ダメです。専務がお帰りください」
「はあ~。今俺が言ったことがわからなかったのか?」

 俺はこれ見よがしに大きくため息をつく。

 そして、頑なにその場を動かない汐里の腕を掴み、上へ引っ張り、立たせた。

 汐里の隣の席に置かれたハンドバッグを手にすると、黒ぶち眼鏡へ視線を向ける。

「ここは支払い済みです。では」

 俺は汐里の腕を掴んだまま、出入口に向かって歩き始める。

「あっ!」

 彼女は見合い相手に急いで頭を下げると、無表情でついてくる。

 ラウンジの出入口では、総支配人に頭を下げられ、エレベーターホールへ向かった。だが少し行ったところで、汐里は足を止めた。

「待ってください!」

 俺は立ち止まったが、汐里を掴む手はそのままだ。

「話がある。上に部屋を取ってあるんだ。ゆっくり話そう」
「へ、部屋を?」
「そうだ。ギャラリーに聞かせる趣味はないからな」

 そう言って、やってきたエレベーターに彼女を強引に乗せた。


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