エリート御曹司が花嫁にご指名です
 キッチンでお茶の用意をするお母さんを手伝っている私にも、お父さんの声が届く。

 優成さんはお父さんの対面に座っており、車の中では脱いでいたスーツのジャケットをかっちり身につけていた。

「奥さまと汐里さんが席に着いたらのお話でいいでしょうか?」
「え? ……ああ。もちろんだよ」

 お父さんの不思議そうな声が、全身で優成さんのほうに意識を向けている私の耳に入ってくる。

 壮兄はキッチンのカウンターに寄りかかり、お茶の支度を手伝っている私を見ている。視線を何度も向けられていることは気づいていた。

「しおりん、優成さんのところへ行ったほうがいいんじゃない?」
「えっ? あ、う、うん」

 ちょうどアイスティーの用意が終わったところで、お母さんの代わりに私がソファのほうへ運んだ。

 緊張は否めなく、トレーを持つ手が微かに震えている。

「どうぞ」

 私は優成さんから順に、アイスティーをコースターの上に置いていき、終わると一瞬間を置いてから、優成さんの隣に腰を下ろした。

 お母さんもお父さんの隣に座り、壮兄はひとり用のソファへ。

 私と優成さんが並んで座るのを見て、お母さんは嬉しそうだ。突然の訪問に、なにか悟っているのかもしれない。

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