エリート御曹司が花嫁にご指名です
「髪は……ハーフアップでいいわよね……ひとつに結んだら、まるっきりビジネスみたいだし……」

 イメージを膨らませていた私は、優成さんがどんな表情でひと房の髪を口元に持っていったかを思い出してしまった。

 あの熱い瞳に、身体の中が疼きを覚えた。

 自分だけが彼の特別になったような嬉しい気持ちになるが、すぐに思い直す。優成さんは私を愛していない。

 彼も赤ちゃんが欲しいからだ、と結論づける。


 十七時になる五分前に自宅を出て、門扉の横で待っていると、美しい流線型の車が近づいてきた。
 
 優成さんの車だ。持ち主のように俊敏で美しい彼の愛車。
 
 車から降りた優成さんは、水色のサマーニットにスリムなグレーのスラックスで、手にはバラの花束があった。

「あ……」

 私も持っている花束に、お互いが「あ……」と口にして、ふっと笑う。

 優成さんは一歩私に近づき、深紅のバラの花束を渡してくれる。

「花屋を通ったら、綺麗だったんでね」
「ありがとうございます。とても素敵な花束です」

 バラとカスミソウのシンプルな花束は、優成さんのようにゴージャスだった。


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