エリート御曹司が花嫁にご指名です
「おはよう。壮兄」

 出かける支度をして、ジャケットをソファの背にかけた私は、キッチンの中へ歩を進める。

「しおりん。おはよう。今日も優成さんと?」
「ウエディングドレスのデザインを決めるの」

 冷蔵庫からオレンジジュースを出してコップに注ぎ、その場で飲み干す。あと十分で、十時。優成さんが迎えに来る時間になる。

「幸せそうで、なによりだな」
「壮兄もいい人を見つけてね。恋人ができたら一番に合わせてね」

 ソファに足を投げ出した壮兄は、「いつかな。ちょっと寝るから」と言って、腕を組んで目を閉じた。

 仕事が忙しいようで、さっき病院から戻ってきたとお母さんが言っていたのを思い出す。

「行ってきます」

 小さく声をかけると、壮兄は目をつむったまま片手を上げてくれた。


 門扉を出たところで、優成さんの車がこちらに向かってくるのが見えた。静かに私の前で停まった車から、彼が出てくる。

 カジュアルな紺色のジャケットに、細身のデニム姿で、オフィスではアップハングの髪がサラッと下ろされていた。

 いつもと違う雰囲気に、私の心臓が高鳴った。

 何度も前髪が目にかかりそうなところを見ているけれど、それはシャワーの後だ。


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