エリート御曹司が花嫁にご指名です
「こっちへ来てキスしてくれないのか?」
 
 キスと聞いて、宮本さんの言葉を思い出してしまった。優成さんと西尾さんがしていたというキスを。
 
 私は小さく頭を左右に振る。

「ダメです。ここは会社なので、自重しましょう」

 本当は抱きしめて、私の不安を払拭してほしい。

 でも、私は優成さんに愛されているわけじゃないのだ。もしもふたりがそういう仲であったとしても、私は黙認して彼の妻になる。

「そうだな。じゃあ、お疲れ。気をつけて帰れよ」

 苦笑いを浮かべた優成さんはそう言って、私から書類へ視線を移動させた。

「はい。お先に失礼します」

 私はその場でお辞儀をして、専務室を退出した。


 翌朝、宮本さんはなにもなかった顔で出社して、私は安堵した。

 彼女は優成さんと私に謝罪し、これからもよろしくお願いします、と真摯な態度だった。

 いろいろと考えさせられる一週間で、私は精神的に疲れを覚えていた。

 土曜日の朝、自室を出てリビングへ行くと、壮兄がソファに座り、スマホを弄っていた。

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