エリート御曹司が花嫁にご指名です
 シアトルは優成さんの妹、華さんが住む街。

 姉のように慕っている華さんは、私が岐路に立ったとき、何度もアドバイスをしてくれており、実の兄弟よりも頼りになる人だった。

 けれど、今回のことは華さんの兄のことでもあり、相談はできない。そう考えたものの、なにもかも放り出して、顔だけでも見たいと思ったのは華さんだった。

 私がシアトルへ来たことは連絡しておらず、いない。少し考えて、気持ちを落ち着かせてから華さんに会おうと思っていた。

 空港から向かったのは、ダウンタウンにある高級ホテルで、シアトル美術館やパイクプレイスマーケットなどに近い便利なロケーションに建っている。

 街の木々や、タクシーでホテルに向かう途中の公園の樹木は、秋で色づきを見せている。

 日本を離れ、素敵な景色の外国へ来たけれど、心はほんの少しも晴れずに、ため息ばかり漏らしている。

 今日は薄曇りで日本よりも肌寒く、日中は同じような服装で問題なさそうだが、夜は寒く、冬物のコートが必要になりそうだ。

 街のショーウインドーにもダウンや厚手のコートなどが目についた。

 気が回らなくて、冬物のコートはキャリーケースに入れてこなかったな。後で街に出てみよう。

 とはいえ、ロサンゼルス経由で日本を離れてなんだかんだと二十時間が経っている。

 現在の時刻は夕方だ。

 買い物は明日にしよう。今は睡眠が取れなかったせいで、頭痛もあって、早く横になりたかった。


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