エリート御曹司が花嫁にご指名です
「コーヒーをどうぞ」

 執務デスクにプラカップを置こうとする。ふいに伸ばした桜宮専務の手が、プラカップを掴んだ私の手も握られてしまい、ドキッと鼓動を大きく跳ねさせてしまった。

「ありがとう」

 彼は受け取ったプラカップに口をつけて、アイスコーヒーを飲む。

「うまい。やはり汐里の淹れるコーヒーがいい」

 そんなこと、一度も言ったことないのに……。

 きっと昨日、好みのコーヒーが飲めなかったからそう言ったに違いないわ。

「では」

 お辞儀をして自分のデスクへ着席し、本日の桜宮専務のスケジュールを確認する。

 九時三十分から、旅客機内サービスの会議が入っている。月曜日にはなかった予定だ。デスクの上の書類は一日かかっても終わらなさそうに見える。

「病み上がりだ。無理せずやってくれ」

 私の考えを読んだかのごとく、桜宮専務の声が降ってきた。

 書類から顔を上げると、こちらを見ていた瞳と視線がぶつかり、また心臓を跳ねさせてしまった。

「は、はい。ありがとうございます」

 今日の桜宮専務は、やりづらい……。

 違うわね。私が意識しすぎているのだ。桜宮専務は普段と一緒。

 そう結論づけて、まずはメモの処理を始めた。

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