エリート御曹司が花嫁にご指名です
「で、もう体調はいいの?」

「あ、はい。お騒がせいたしました。軽い熱中症から脱水症状を起こしたと」

 いつまでも話しているわけにもいかず、私はマシンにプラカップをセットして、アイスコーヒーのスイッチを押した。

 三和子さんが仕える社長の朝はお茶と決まっており、マシンの隣に立ち、急須に高級宇治茶の茶葉を入れている。

「特に悪辣な噂話ではないから、箝口令(かんこうれい)は敷かないわよ。しばらくは、ちょっとうっとうしいと思うけど。みんなはロマンスを期待しているのよね。ふたりとも手の届かない存在だから」

「私は手の届かない存在なんてことないです」

 アイスコーヒーが入り、ガムシロを注意しながら注ぐと、木のマドラーで混ぜ、蓋をした。

「でも、みんなにとっては、これでふたりが恋人同士だと確信しているわ」

 そう見られるのは頭が痛いけれど、あと一ヵ月間のこと。

「三和子さん、今週、退勤後にお時間が空いている日はありますか?」
「いつでもOKよ。後でメッセージを送って」

 私たちは話を終わらせ、それぞれの執務室へ戻っていった。


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