エリート御曹司が花嫁にご指名です
 まずはそのまま食べて、残りを薬味とお茶でサラサラッといただく。

 今朝まで食欲はなく、トースト一枚だけしか食べられなかったのに、現金なことに、大好きな鰻とあって食べたい欲求が出ている。

「どうだ? 少し休んで戻ってくるというのは?」

 ここまで言ってもらえるのは嬉しい。けれど、辞めて桜宮専務を忘れなければならないのだ。

 でも今、辞めると言い張れば、この場の雰囲気が悪くなる。

「わかった。夏季休暇中に考えてくれないか。今は食事に集中しよう」

 夏季休暇……今週の土曜日から、お盆休暇が八月十五日まである。空港旅客関連に携わっていない従業員の休暇になる。

 旅客関連部署の従業員は繁忙期で、好きな日に休みを取るシステムだ。

「……はい」

 決心は変わらないけれど、私が頷くのを見て、桜宮専務は料理に手を伸ばした。

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