俺と、甘いキスを。

胃薬が効いてきたのか、胃痛が緩和されている気がする。
花は摘まれた頬に手を当てて、俺をムッと見た。
「あの時はそう思ったんです。美人三人が右京さんの周りにいれば、誰だって悲観的になります」

──こいつ、まだわかってないな。

花を抱き寄せた腕に力を入れる。
「いい加減、俺が世話を焼いているのはお前だけだ、と自覚してほしいんだが」
「え、ちょっと……んっ」
花の唇に触れる。角度を変え何度も刺激を与えていく。僅かに開いた唇から口内に舌を入れ、花の舌を絡めていく。
「んっ……はっ」
苦しそうに息をする色気のある声が、俺の欲を掻き立てていく。

でも、まだ抱けない。

「ホントに……俺はお前に振り回されっぱなしだ」
艶やかに潤った彼女の唇に、少しだけ満足する俺。
「もう、からかわないでください」
と、腕の中で恥ずかしそうに目を逸らす花は、特別に可愛いと思った。

調子が狂いそうになる前に歯止めをかけ、欲を抑えながら頭を切り替える。
花に聞くことがあるからだ。
「花、原田京華に何か聞かれたそうだな。梶田さんが見ていたらしい」
「えっ、ちなみさんが?」
大きな瞳が更に弾かれたように大きく開く。何を聞かれたのか聞いてみれば、彼女は「それは」と言葉を濁す。
「俺の居場所でも聞かれたか」
と、予想していたことに、その小さな頭がコクリと上下に動いた。
「原田さんに、右京さんがどこにいるか知っているかと聞かれました。彼女は「右京さんはマンションにいないみたいだ」と言っていました」
その答えに、俺は背中をゾクリと震わせた。

──原田京華が、俺のマンションに来ていた?

教えてもいない自宅の住所を彼女が知っていたことを不思議に思いながら、花に質問を続ける。
「花は俺の居所を教えたのか」
「教えていません」
と、首を横に振る。
「私は「わかりません」とだけ答えました。右京さんから連絡があったら知らせるように、と言われました。どうしますか?」

あの女のことで、花を巻き込むわけにはいかない。
「俺のところにも原田京華から連絡があった。連絡は俺がするから、花は何も言わなくてもいい」
「わかりました」
彼女はそう言って、俺から体を離した。
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