俺と、甘いキスを。
彼女は腑に落ちたように、
「だから私を強引に社食に連れていったのですね」
と、頷く。
俺も頷き、話を続ける。
「無理矢理花を連れて行くような形になって、少しかわいそうなことをしたと思った。けど、花と食事をすることで、あれは周りに牽制を与える意味もあったんだ」
「牽制?」
「そう。あの時、花は周りからあんな言われ方をして少しムカついた。だから花が俺に取り入ろうとしてるんじゃなく、俺が花を構っているという意識を植え付けたかった」
「あの……あーん、も?」
「……っ」
──なんだよ。可愛すぎるだろ。
「あーん」と、小さな唇を丸く開けた顔に、一瞬で骨抜きにされた。
思わず、そのピンク色の唇に軽く甘噛みする。「チュッ」とリップ音を立てて唇から離れると、花は顔を赤く染めて目を丸くしていた。
「ここがお前の家でよかったな。俺の家なら食われているところだ」
「なっ」
口を魚のようにパクパクする顔も、反則的に可愛い。
「話を戻すと、「あーん」は元々どこかで見ているであろう原田京華に見せつけるためだった。同時に峰岸さんにも油を注いだことにより、花を危ない目にあわせてしまったんだけどな」
花が峰岸真里奈に階段で突き落とされた時は、本当に焦って背中が震えた。あんなことは二度とごめんだ。
花は話す俺を見上げている。
「あの時はビックリしたし、あのまま落ちてしまった方が良かったんじゃないかとさえ思ったこともありましたが……今は、助けてもらってよかったと思ってます」
「捻挫程度で済んだんだ。自分を傷つける言い方はするなよ」
と俺は花の柔らかい頬を軽く摘んだ。