俺と、甘いキスを。

「あの、原田さんのことで、私からも聞きたいことがあります」
淡い桃色の頬をして、花はじっと俺を見る。
「柏原研究室で話したこともありましたが、桜の木の下で原田さんと、その……抱き合っていたのは……」
「それは違う。抱き合っていたんじゃない」
俺は慌てて否定した。
「お前に隠すわけじゃないが、あれは、原田に告白されて断ったところだったんだ」
「え?告白されたんですか」
驚く花に説明をする。
「あの日、プログラムのチェックに疲れて休憩をしようとしたら、原田に呼び出された。あの桜のあるベンチで告白されたんだよ」

『右京さんが好きです。奥さんと別れて、私と結婚してください』

あんぐりと口を開けた呆然とする花に、俺は「スゴい攻撃的な告白だろ?」と笑った。
「原田が言ったんだ」

『奥さんは長い間海外にいて何人も恋人がいるじゃないですか。ネットにも話題になって、夫の右京さんは迷惑してるはずです。夫婦関係が築けないなら、右京さんだけが我慢する必要はないと思います』

「別に我慢はしていないが、マリエが好き勝手しているからといって、俺は原田と関係を持つ気はないと言って断った」
「そ、そうだったんですか」
「ああ。「断るなら最後にハグさせてくれ」と言うからさせてやったまでだ。抱きついたのは向こうだが、俺は原田を抱きしめていない」
と、ありのままのことを話した。
花はしばらく俺を見つめると、信用したのか表情を緩めた。

「俺が抱きしめたいのは、花だけだ」
花の体がピクリと反応する。
それが「嬉しい」という合図なら、この茨の道も捨てたものじゃないと思った。
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