俺と、甘いキスを。


午後十時三十分。
風呂をすませた俺は、部屋でスマホのネットニュースを見ていたときだった。
スマホが着信を知らせる。その相手の名前に軽く笑みを浮かべて画面をタップした。
数日ぶりに聞くマシンガントークも慣れたら面白く感じる。何より、生まれてからずっと聞いてきた声なのだから。
「わかってるよ。そっちは昼だな。で、何かわかったのか」
スマホの向こうから短い唸り声の後で、俺の知りたい言葉が耳に入ってきた。


「そうなのか……」
話を聞いた俺は、自分に重く乗っていた塊にヒビが入ったような気持ちになった。あまり期待していなかったが、予想以上のものが得られたのだ。
さすが、プロといったところか。
まだスマホから吠える優秀な「相棒」に、クスッと笑う。
「そういえば、あのブランドのキーケースが欲しいって言ってたな。後で請求してくれ」
途端に機嫌の良い弾けた声に変わり通話が切れた。
この件に関しては、もう一つの確認を待っているところだ。

さて、次は。

頭の中であれこれと考えていると、縁側から「右京さん」と声が聞こえた。
「今日はもう寝ますね。あの……峰岸さんを連れてきてしまって、本当にすみませんでした」
パステルグリーンのパジャマ姿の花が、ぺこりと頭を下げる。
縁側に立つ俺たち。床の底冷えが体に伝わってくる。
「花が悪いんじゃない。気にするな」
「峰岸さん……明日、何か言ってくるでしょうか」
と、心配そうな顔を向ける。
俺は彼女のふんわりと揺れる髪を撫でた。
「大丈夫。何かあっても俺が守る」
「右京さん……」
自分を頼ってくる花に、理性はいつも崩壊しそうだ。
「花、また明日な」
と、その柔らかな唇に触れるだけのキスを落とす。それだけなのに、花から漂う甘い香りに酔いそうになる。
キスを素直に受けた花も「おやすみなさい」と、照れ笑いした。
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