俺と、甘いキスを。

そんな親子の姿を、私の両親は目を丸くして見つめて、私の隣から兄の小さなため息が聞こえた。
私たち家族が呆然としていると、相手は見られていることに気づいていないのか、貝塚部長まで一緒になって話が盛り上がってしまっている。
それより何より、彼らは一番大事なことを忘れていないだろうか。

──「結婚式は」なんて言ってるけど、私は「結婚前提で」とか「結婚してください」とも言われていないんですが?

そして、私の結婚の意思はどうなるの?と、彼らを目の前にして完全に引いてしまっていた。
チラリと両親の顔を伺えば、二人とも顔に貼り付けた笑顔がすっかり失笑していることがわかる。ちなみに兄はずっと無表情だ。朴念仁よろしく、料理を口にしながらチラリと柴本貴臣を冷めた目で見ることを繰り返している。

暴走していく結婚話。どうしようか、と手に持つナイフとフォークを宙にうかせたまま困惑するばかりだった。

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