俺と、甘いキスを。
右京蒼士はワークチェアの背もたれに体を預け、「うーんっ」と声を上げて背伸びをした。
ああ、完全に集中力を切らせてしまったようだ。
「右京さん、本当にすみません…」
と謝ってみたものの、彼の集中力が戻るわけではない。
しかし彼はキーボードをカタカタと打ちながら、
「別に謝らなくていいし、敬語もいらない」
と言って、画面を黒くした。
立ち上がって、ミニキッチンの方へ歩いていく。
私は次の仕事に取りかかるために、ホチキス止めのスピードを速めた。
コトリ、とデスクに置かれたマグカップから、あたたかそうな蒸気が上がっている。
白に赤のボーダーのマグカップ。
可愛いと思った。
「ありがとうございます」
「ああ」
彼の片方の手にあるのは、白と青のボーダーのマグカップだった。
──おそろい。
ドキドキと速くなる脈を誤魔化すように、マグカップの飲み物を啜った。
これは。
右京蒼士を見る。
彼からはコーヒーのいい香りがする。
私を見て、フッと表情を緩めた。
「花はコーヒーよりそっちがいいだろ。スティックタイプだけど、そこにあるから使って飲んで」
と言って、ミニキッチンへ視線を向けた。
ミニキッチンの辺りには冷蔵庫も食器棚も電子レンジもある。そしてコーヒーメーカーも湯沸かしポットもIHコンロもある。
スティックタイプのミルクティーが入った箱も。
資料作りのホチキス止めが終わり、ホッと息をついてミルクティーを飲む。
隣の右京蒼士は再び画面に目を向けながら、マグカップに口をつける。