俺と、甘いキスを。
──…ん?
特に何が、ということではないのだろうけれど。
一つの疑問が生まれた。
この研究室にはコーヒーメーカーがあり、好きな時にコーヒーを飲むことができる。確か五年前の柏原研究室にもコーヒーメーカーがあり、みんなで使っていたはずだ。それは柏原さんがポケットマネーで買ったお気に入りのコーヒーメーカーだ、と話題になったからだ。
なのに何故、当時柏原研究室勤務だった右京蒼士はあの時、わざわざ二階の自販機でコーヒーを買っていたのだろうか。それに、この研究室にもコーヒーの空き缶がいくつかあったのを見た。きっと二階の自販機で買ったものだ。
何故。
「事務所に戻ってからでいいから、このファイルを三冊注文して欲しい」
「はい、了解です」
と言って、忘れないようにスマホのカバーにメモを貼り付けた。
次の作業に取りかかろうとした。
そういえば、何か大切なことを聞き逃しているような気がした。思い出そうとするが、ついさっきのことなのに忘れてしまっている。
気になってはいるものの、パソコンでリストの修正画面を見始めた時には、そのことも頭の隅に追いやってしまっていた。