俺と、甘いキスを。
翌日、出勤すると何かがおかしいことに気づく。
女性社員に挨拶をしても、私をチラッと見るだけで他へ行ってしまう。自分のデスクにいると、周りからヒソヒソと話し声も聞こえてくる。
──何だろう?
と、何気に振り返ってみたが、誰が何を話しているのかまではわからなかった。
ちなみは今日は私用でお休みだ。
今日は居心地が悪い一日になりそうだと思った。
ちなみの仕事である勤怠業務を始める。出勤時刻がタイムレコーダーに打刻されていない社員には連絡して出勤時刻を聞くのだ。
いつもは何事もなく教えてくれるのだが…。
『人の悪口を言いふらす人と気安く話したくないんだけど。八時四十分にしておいてちょうだい』
「え?」
聞けばそんな身に覚のえないことを言われ、一方的に通話を切られた受話器を持ったまま呆然とする。
「な、なんなの?」
ふと、視線を感じて振り向けば、何人かの女性社員が睨むような目つきで私を見ていた。
事務所の中は暖房が効いているのに、私の周りの空気はとても冷たく感じた。
午前中は、四月から入社する社員の制服の確認や備品の発注の問い合わせをしていた。その後別棟の研究室からのミーティングルームの使用状況の確認をする。
今は抜け目なく、自分の仕事を考えるようにした。
お昼休みのチャイムが鳴る。
今日も五階の資料管理室でランチにしようと、ランチバッグを持つ。
「お疲れ様です。今からお昼ですか?」
目の前に、右京蒼士が柔らかな微笑みを浮かべて立っていた。