俺と、甘いキスを。

デスクを挟んで向かい合って座る私たち。
私の目の前にあるのは、お弁当ではなく右京蒼士がミニキッチンで作ったインスタントラーメンがある。彼の前にはインスタントラーメンと、私のお弁当がある。
今日のお弁当の中身は卵焼きとコロッケだ。コロッケは昨日の夕飯の時に作り置きしたのもで、お弁当箱の隙間埋めにほうれん草のおひたしを添えてある。ご飯はゆかりをふりかけた。
そんなお披露目されたお弁当の中身を見た右京蒼士は、グッと眉を寄せた。

「ちっさ。お前、こんな弁当で腹が満たされるのか?」

「文句があるなら、返してください」
と、サッと手を伸ばしたが彼がパッとお弁当を持ち上げられるが早く、見事に手が空振りする。
「ほら、のびるだろ。さっさと食うぞ」
とインスタントラーメンを指した。
私はムスッと口を尖らせながら「いただきます」とポツリと言って、食べ始めた。

静かな部屋の中。
キャベツたっぷりの塩ラーメンは美味しい。
向かいの右京蒼士に目を向けると、コロッケを食べているところだ。モグモグと口を動かしている表情は特に何もないが、切れ長の目尻が下がっていた。それを見ただけで、ホッと胸を撫で下ろす自分がいた。

「もっと大きな弁当箱がいい。これでは少ない」

不満顔を露わにして、今後も食べることを前提に要求を突きつけてくる。
「ご飯のゆかりは好きだが、時々しば漬けを入れてくれると嬉しい」

おまけに好みまで押し付けてきた。

人のお弁当を横取りしたくせに、何を言ってるんだ、この人は。
< 38 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop