俺と、甘いキスを。

仕事はいつもどおり遂行している。
向かいのちなみが私のデスクへ、イチゴ飴を投げて寄こした。
「花さん、体調悪いですか。顔色悪いですよ」
「え、そう?」
言われて初めて自分の顔色が悪いのか、と気づく。
「雨に打たれて風邪ひきましたか」
「熱っぽくないから、大丈夫だと思うけど」
ちなみに聞かれて、体調に変化がない私は首を傾げた。

雨でびしょ濡れのランチバッグ。事務所で中身を確認したら、おにぎりは形が崩れて中身のしば漬けが見えている。右京蒼士にお裾分けの唐揚げは雨に打たれて食べられない。私のお弁当箱は地面に落とした時に打ちどころが悪かったのか、五センチほどの亀裂が見つかった。中身も片寄ってご飯とおかずが完全に混ざり合ってしまっていた。

私のお昼は壊滅的になった。

社食にするしかないのか。

確か社内食堂は、先に食券自販機で券を買ってからトレイを持って厨房の前に並ぶ。セルフで料理を受け取っていくシステムのはず。
数年前に一度、社食で日替わり定食を食べたことがあった。その日はアジフライ定食で、揚げたてのサクサクのアジフライが美味しかったことを覚えている。

周りから陰口を叩かれている今、社食でお昼を食べる気にはなれない。

──やはり、昼食を抜くか。

食堂で視線を感じながら食事をするくらいなら、二階の自販機で缶のコーンスープを飲んでいる方がいくらかマシだ。

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