俺と、甘いキスを。
右京蒼士が、一瞬だけ真里奈に視線を向ける。
「別に会話がないからって、楽しくないとは限らないと思いますよ。今だって先に食べてしまった僕に追いつこうと、必死に唐揚げを頬張る川畑さんはなかなかレアだと思うし、見ていて飽きないです」
「…うぐっ」
思ってもいないクセに言い並べていく彼に、思わず唐揚げを喉に詰まらせてしまった私。胸をドンドン叩いていると、
「そんなに慌てなくて大丈夫だから」
と、笑って水のグラスを差し出す彼。
もらった水を飲んでホッと息をつく。
そんな私の姿をニコニコと機嫌良く見ている右京蒼士の隣で、真里奈は面白くなさそうに顔を歪めた。
最後に残しておいた、一口サイズにカットされたパイナップルを食べ始める。
ずっと私たちの様を見ていた、私の隣の女性社員が、日替わり定食のカキフライを食べてから口を開く。
「右京さんは川畑さんと長く一緒にいたせいで、きっと洗脳されているんですよ」
すると。
その言葉を聞いているのか否か、右京蒼士は自分のパイナップルをフォークで刺して、子供に向けるような優しい眼差しで私に突き出してきた。
「川畑さん。はい、あーーん」
「?!?!?!」
彼のこの行動は、隣の真里奈たちが「ガタッ!」と椅子の音を立てて立ち上がり、顔のパーツを全て丸くさせて、声にならない叫びを上げて驚愕を与えていた。