俺と、甘いキスを。
「……」
とんでもない屁理屈に、開いた口が塞がらない。
そっと両手のお盆が持ち上げられ、近くのソファに置かれた。
彼は少し頭を傾けると、私へ手を伸ばす。その細長い指が私の頬をするりと、ひと撫でした。
「お前が周りから何と言われても、どんな接し方をされていても」
頬を撫でた彼の手が、再び私の頬を包む。
「お前が「もう解放してくれ」と泣いて懇願しても」
彼の瞳がゆらりと輝きを揺らしたのがわかるくらい、顔がすぐそこにある。
「俺がお前を手放すことは、絶対にない」
「…んっ」
重なった唇の熱に、思わず声が漏れてしまった。ドクドクと心臓の脈打つ速さに、ぎゅっと目を閉じた。
「不倫」という文字が脳内を掠めて、私は右京蒼士から離れようと、彼の胃のあたりに手を置く。
「んっ」
私の後頭部が彼の片手にしっかりと固定され、もう片方の腕は背中が離れていかないように支えられる。
あの時、この場所で、唇を重ねただけのキスが子供だましになるくらい。
動揺して小さく開いた口に、彼は容赦なく舌で攻めてきた。
「んぅ…」
舌が歯列をゆっくりと堪能するように撫でる。そして奥に逃げていた私の舌を優しく撫でて誘い出す。
絡み合う舌が、どうにも恥ずかしくて、彼に置いた両手は無意識に白衣を握りしめている。
「はっ…」
息が苦しくなってきても、右京蒼士は離してくれない。どちらのかわからない唾液が、重なる唇の間から滴り落ちていく。
力いっぱい抱きしめられ、口を塞がれ舌同士が色っぽく絡み合う恋人のようなキスに、脳が甘く溶けてクラクラする。
「欲しい」と言われたみたいに、私の舌が優しく吸い上げられる。
右京蒼士の唇は、私の舌先を名残惜しそうに吸い続け、「チュッ」と艶かしいリップ音を立てて離れていく。
「まだ離れたくない」と、唇と唇の間に銀色の糸が引いた。