俺と、甘いキスを。
「一番の根本的な原因は俺だな」
口を開いた彼を見上げた。
ルームランプの灯りに薄く浮かぶ彼の姿、その切れ長の目は私を捉えている。
「峰岸さんも他の人と同じ接し方をしていたはずだったんだ。でも彼女があまりにも俺を特別扱いするせいで、俺も少し甘えた部分があったかもしれない。研究が忙しくなると追いつかない雑用などを頼んでいたことがあったからな」
──ただ遠くから右京蒼士を見ていただけの私と違い、峰岸真里奈は彼に対して積極的にアピールしていたんだ…本当に彼のことが好きだったんだ。
今更ながら、恋愛の行動力の彼女の強さを羨ましく思った。
「峰岸さんが俺に近づく度に、思ったことが一つだけあった。彼女に申し訳ないと思いながら、俺は峰岸さんがあの人だったらよかったのにと、いつも見つめた場所があった」
私を見つめる瞳が、潤んで揺れる。
「事務所の中にいる、お前だったらよかったのに…と」
どくんっ。
鈍く、強く響く心臓が痛い。
なに、言ってるの?
今になって。
今になって。
呼吸が荒くなる。気がつくと肩で息をして、私は首を何度も横に振る。
「なんで、なんで…もう、何もかも遅いのに」
視界がぼやけて、頬に熱い液体が流れ落ちる。
コトリと、マグカップが置かれる音がした。スッと涙を拭かれる優しい親指に、暴れる脈が大人しくなっていく。
綺麗な顔を近づけてくる右京蒼士に、私は顔を逸らした。
「みないで」
きっと酷い顔をしている。
両頬に彼の手のぬくもりを感じた。そして、ゆっくりと顔を前に向けられる。
「俺は花を泣かせてばかりだな」
目尻を下げて口角をあげるその顔は、とても悲しそうだった。