俺と、甘いキスを。

目の前から漂ってくる醤油バターの香ばしい匂いに、お腹が「きゅるるる」と鳴いた。
彼は私をワークチェアに座らせると、
「急だったから有り合わせだけだど、腹が減ってると眠れないからな」
と言いながら、向かいの席に座った。

ほうれん草とベーコンたっぷりの和風パスタ。

私はごくんと息を飲んで右京蒼士を見た。彼はフォークを片手に私を見る。
「お前を世話したからって、何か見返りが欲しいとは思ってねぇよ。ほら、冷めないうちに食うぞ」
と、食べ始めた。
「いただきます…」
私もパスタを口にした。
「…っ」
醤油とバターで味付けされたシンプルな味なのに、身体中に染み渡る美味しさにホッと力が抜けていく。
今日は朝から落ち着かないことが続き、心身共にぐったりしていた。
この食事で、やっと落ち着いた気がした。

『美味しい食事は元気にしてくれる』

遅い時間の食事でも、その通りだと思った。

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