俺と、甘いキスを。

「連絡先、交換しないか」

そう言われたのは、食後にあたたかいミルクティーを淹れてくれたときだった。
右京蒼士は切れ長の目を俯き加減に視線を左右に動かして、右手にスマホを握りしめていた。

──なんだか、彼らしくない。

人に連絡先を聞くくらい、そつなくこなしそうな人なのに。
「はい。でも、私のスマホは寝室にあります」
と言えば、途端に優しそうに笑みを浮かべて「とってくる」と席を立つ。

──幻覚か?右京さんのお尻からシッポが見える…。

とても嬉しそうに左右に振る、シッポが。

その後ろ姿を胸に収めたまま、私のスマホを差し出す右京蒼士と無料のメッセージアプリで連絡先を交換した。
「これでいつでも連絡できますね」
と言ったが、決して嬉しいわけではない。連絡先を知られてしまったのだ。これから頻繁に呼び出されることが目に見えていた。

「……」
右京蒼士はスマホを見つめたまま、無言だ。
「どうしたんですか」
と聞けば、テーブルに置いた私のスマホに手を伸ばした。

「やっぱり、ちゃんと番号とアドレスも知りたい」

彼はスマホを操作すると、「よし、これでいい」と呟いていた。
とても満足した顔を浮べて。
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