俺と、甘いキスを。


「ほ…本当に、一緒に、ですか?」

「ここにはソファもないから、横になれる所はこのベッドしかない」
右京蒼士は平然とした態度で言う。

シャワーを浴び、彼に借りたスウェットを着ただけの私。下着や服は彼に洗濯されてしまったのだ。そして彼は熱心に私の捻挫した足首の手当をして、今に至る。
右京蒼士も手早くシャワーをして、タオルドライした黒髪はまだほんのり湿っている。
「けが人のお前をどうこうしようなんて思ってねぇよ。早くベッドに入れ」
「わっ、私は研究室の机を枕代わりにできますので、向こうで寝ま…」
「花」
言い終わらないまま、名前で被せてきた彼。
先にベッドに入った右京蒼士は掛け布団を捲り、私を促してくる。その姿が超絶な色気を発して、私の頭がクラりと揺れた。
「早く。風邪をひく」

すごく広いベッドではない。多分セミダブルくらいだろう。
「一人より二人の方があったかいから」
確かに暖房の切れた部屋は寒い。きっと隣の研究室は広いからもっと寒いだろう。

──絶対に、眠れない。

私は罰ゲームに挑むくらいの覚悟を決めた。
「…本当に、寝るだけですからね」
「当たり前だ」

目を細める彼に、私はおずおずとベッドに近づいた。

できるだけ、ベッドの隅に身を寄せる。
右京蒼士が嫌だから、ではない。
好きだからだ。ドキドキして緊張するのは当然だ。

──こ、こんなことになるとは。

どうしたらいいのかわからない私はすっかり眠気が飛んで、彼に背を向けたまま暴れる心臓を抑えるのに必死だ。
五年間、ただひっそりと、あたためていた恋なのに。
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