【女の事件】豚小屋

第11話

10月10日のことであった。

ちづるの父親が経営していた工場が債権者の手によって差し押さえられた。

残された親族たちは、債務処理の仕方が分からないので、クリョしていた。

それと比例するように、ちづると鎮房夫婦の夫婦仲は見えないところで冷えきっていた。

この最近、鎮房(しげふさ)は仕事に対する意欲がうすれていた。

家の中にいるときも、イヤそうな表情で仕事に対する不満ばかりを言うようになった。

同時に、ちづる自身も気だるさが目立っていた。

ちづるは、パートの仕事を1日3時間に減らしていた。

しかし、ちづるの気持ちがヒメイをあげていた。

朝8時過ぎのことであった。

ちづるは、ぼんやりとした表情で職場へ出勤する鎮房(しげふさ)の背中を見送った後、家の中に入ろうとしていた。

そんな時であった。

40過ぎの男がちづるのもとへ突然やって来て、ちづるに凄んできた。

「オラオドレ!!やっと見つけたぞ!!」
「なんなのかしらあんたは一体!!アタシにいちゃもんつけに来たのであれば帰りなさいよ!!」
「オレはオドレを父親が経営していた工場に勤務していた南川や!!オレはオドレのオヤジにギャクタイされたから仕返しに来た!!」
「分かったわよ!!アタシの父に不満があると言うのであればアタシがいくらでも聞いてあげるわよ!!家の中に入ってよ!!」

ちづるに凄んできた男は、工場のもとの従業員の南川であった。

南川は、工場の待遇面に強い不満を抱き続けていた。

ちづるの父親が豚小屋で愛人の女と一緒に殺されたと聞いたので、怒りの度合いをさらに強めていた。

家の中にて…

南川は、ちづるに対してカネを出せと強要して来たので、大ゲンカになった。

「カネくれって、いきなりカネくれなんて順序が違うわよ!!」
「順序なんかどーでもいい…そんなことよりもカネくれよぉ…この通り…」

南川が泣きそうな声でちづるにカネのムシンをしたので、ちづるはブチ切れていた。

「なんなのかしらあんたは一体!!カネくれと言うのであれば、アタシの父に対する不満を言うてからにしてよ!!」
「そんなことは分かってるよぉ…だけどオレは困っているのだよぉ…助けてくれ…オレのダチが知人のやくざ組織の上納金を持ち逃げして、女と行方をくらませたのだよぉ…オレがしりぬぐいをしなければならないのだよぅ…助けてくれぇ~」

南川の話を聞いたちづるは『分かったわよ!!』と言うたあといくらいるのかと聞いた。

「いくらいるのよ!!」
「数万円…」
「数万円ね!!」

ちづるは、財布の中から6万円を出して南川に渡した。

「6万円でいい!?」
「ああ…6万円でいい…オレ…これから折尾(北九州市)へ行く…ダチを助けに行く…戻ってきたらお礼する…ヤクソクする…」

南川は、ちづるから6万円を受け取ったあと家から出て行った。

家から400メートル離れた場所に来た南川は、口笛をふきながら『パチンコでもしに行こうかなぁ~』とつぶやいた。

ところ変わって、八王子市中野上町にあるパチンコ店にて…

南川は、オキニのパチスロの台でパチスロ遊びをしていた。

この時、大負けをきっしたので、となりに座っている男性客に台を代わってとお願いした。

男性客は、ものすごくイヤそうな表情をして店を出ていった。

南川は、ニヤニヤとした表情でとなりの台に座ってパチスロ遊びを続けた。

その様子を、嶋口さんがスマホで動画の隠し撮りをしていた。

店の外へ出た嶋口さんは、スマホでハローワークに電話をして、雇用保険の担当者に報告をした後、南川が出てくるのを待っていた。

それからしばらくして、南川がルンルン気分で店から出てきた。

それを見た嶋口さんは、南川を呼び止めてことの次第を問い詰めた。

「南川さん。」
「なんや!!」
「ハローワークの嶋口ですが、ちょっとお話しがあります。」
「あとにしろよ!!」
「今話があります!!」
「あとにしろと言ってるだろ!!」
「それじゃあ、いつになったら話をするのかしら!!」
「るせーなババァ!!」
「ババァでもなんでも言いなさいよ!!そんなことよりも、あなたはあんなことをしていいのかしら!!」
「なにをしようとオレの勝手だ!!ババァにはカンケーねえだろ!!」
「アタシは南川さんのことが心配だから呼び止めたのよ!!」

南川は、嶋口さんがものすごくあつかましい声で言うたので、ものすごくイラついた声で言い返した。

「ババァはなにが言いたいのだよ!!雇用保険を受け取っている身分の人がパチスロ遊びをしたらいかんのか!?」
「そんなことは言ってません!!」
「帰れよ!!帰れよババァ!!」
「南川さん!!」
「なんや!!」
「南川さんは、雇用保険を申し込んだ時にヤクソクごとを聞いていましたか?」
「ヤクソクごとぉ~知らねえよ!!」
「それじゃあ南川さんに聞くけど、最後に面接に行った日はいつですか?」
「(ケーソツな声で)知らねーよぉ。」
「南川さん、あなたは面接に行っても不採用の山ばかりが続いていたよね。」
「(チッ!!)」

舌打ちをした南川は、投げやりな言葉で嶋口さんに言うた。

「どーでもいいじゃん…オレはどこへ面接に行っても『不採用です。』と言われる…どこへ行ってもオレのことを必要としてくださる事業所なんかねーのだよ!!だからシューカツなんかやめた!!文句あんのか!!」

南川から舌打ちされた嶋口さんは、むっとした表情で南川に言うた。

「南川さん、あなたがそのように言うのであれば愛知の実家へ戻ったら?」
「なんやババァ!!今オレになんて言うた!!」
「あなたに舌打ちされたから、アタシは怒っているのよ!!」
「てめえがオレにいちゃもんつけてきたのだろ!!」
「アタシがいつあなたにいちゃもんをつけたのですか!?」
「るせえんだよババァ!!愛知の実家は、オレの帰る家じゃねえのだよ!!」
「あなたのことを心配してくださっている人たちがたくさんいるから愛知へ戻ったらというている!!」
「そのように言えるコンキョはなんや!!」
「あるからアタシは言うてるのよ!!そのように言えるコンキョ…え~と…」

嶋口さんは、言おうとしていた言葉をど忘れした。

南川は嶋口さんにニヤニヤとした表情で言うた。

「言えないのかよ…バカだねぇ…」
「南川さん…」

嶋口さんは、南川に対してよりきつい言葉を投げつけた。

「南川さん!!シューカツしないのであれば雇用保険の受給者資格をハクダツします!!」
「ハクダツ…すれば~…煮るなり焼くなり喰うなりどーでもしろよ…バーカ!!」
「バーカって、就職のお世話をする人になんてことを言うのよ!!」
「るせえな!!コネ使って、国の公務員になったバカをバーカと言うてどこが悪いのだよ!!バカお嬢さま!!」
「あなたのような性格では、東京で働くことなんかできないわよ!!だから愛知の実家へ戻ったらというているのよ!!よくもアタシにバーカと言うてボロクソになじったから仕返しよ!!」

嶋口さんは、南川の右足を思い切りけとばしてアカンベーした後、走って逃げて行った。

南川は、右手で握りこぶしを作ってブルブルと怒りに震えていた。

南川は、思い切りキレていたので、この後過激な行動を起こした。
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