【女の事件】豚小屋

第4話

あずさは、近所の奥さまが発した言葉が原因でものすごくキレていたので、晩ごはんの献立を作ることをやめた。

だから、おとなりさんの家のお残りのチャーハンをいただいた。

中華鍋で残り物を暖めなおして、中華あじをパラパラとふりかけて、おさらに入れて食卓に出した。

家の食卓には、あずさとひであきとほのかとひろつぐの母親がいた。

ひであきとほのかは、楽しみにしていたグラタンが変更されたので、食べたくないと泣きそうな声で言うた。

「どうしてグラタンじゃないのぉ…」
「グラタン食べたかったのにぃ…」
「ああ…ひであき、ほのか…ママはわざとウソをついたのじゃないのよ…急な予定変更が出たからチャーハンに変わっただけなのよ…お残りのチャーハンでもごちそうだと思って食べればおいしいよ。」

ひであきは、ひろつぐの母親が言うた言葉にキレていたので、あずさにスプーンを思い切り投げつけて、食卓から出ていった。

ひろつぐの母親は、気だるそうな顔をしているあずさにブチ切れた。

「あずささん!!」
「はっ、はい…」
「あんたこの頃気持ちがたるんでいるわよ!!いつ頃からなまけぐせがついたのかしら!?」
「えっ?」
「それに、この頃ひでのりが毎晩のように残業だと言うているけど…本当に区役所でお仕事をしているのかしら!!」
「おばさま!!どうしてアタシに言いがかりをつけるのですか!?アタシは一生懸命になって努力しているのよ!!」
「いいわけばかり言わないでちょうだい!!それと、ふさえとふさこもこの頃生活態度が悪いみたいね!!ふたりとも成績も大きく堕ちて(おちて)いるわよ!!」
「おばさま!!どうしてふさことふさこのことまで出してくるのですか!?ふさえとふさこにどんな落ち度があると言うのですか!?」
「落ち度があるから言うたのよ!!あずささんもあずささんで落ち度がある、ふさえとふさこがだらけているのよ!!」
「おばさま!!アタシにどう言う落ち度があると言うのですか!?」
「ドロボーはだまりなさい!!ひろつぐの学資保険と家の貯金をドロボーして、ふさえとふさこの学費に使った!!だから落ち度があるのよ!!」
「ですから、おばさまはアタシたち家族にどうしてほしいのですか!?出てゆけと言いたいのですか!?」
「ええ、その通りよ!!」

端で聞いてたほのかが、激しい声で泣き叫んでいた。

ひろつぐの母親は、やさしい声でほのかをなぐさめた。

「ほのか…ごめんね…ごめんね…ごめんね…」
「おばさま!!ほのかが泣き叫ぶまで大声を出しておいて何なのですか!?ほのかにふれないで!!」
「あずささん…」
「ほのかにふれないでと言うているのが聞こえないのかしら!!」

あずさは、ワーッとなってひろつぐの母親を突き飛ばした後、ほのかを抱きしめて部屋へ逃げ込んだ。

あずさに突き飛ばされたひろつぐの母親は、ひどく気落ちしていた。

家族が仲良く暮らして行くことができない…

家族がバラバラになってしまう…

助けてほしい…

助けてほしい…

7月7日のことであった。

ふさこが通っている高校は、1学期の期末試験が終わった。

ふさえたち2年生は、8月に行く修学旅行のプランニングを立てていた。

修学旅行の行き先は、シンガポールと済州島と函館の3つである。

ふさこは、この最近学校に来ていないので修学旅行の準備どころか出席日数が規定数に足りなくなる恐れが生じた。

だから、高校に行くこと自体が苦痛になっていた。

たまに学校に来ても、品物を取りに来るくらいであった。

クラスのコたちをさけるようになったので、ふさこ自身の心が大きく壊れていた。

この日、ふさこは残っている品物を全部取り出したあと、すぐに帰る予定であった。

学校から出ようとしていたふさこは、クラスのコに呼び止められた。

ふさこは、クラスのコと一緒にピロティの広場のベンチに座って、お話をしていた。

クラスのコは、ふさこにどうして学校に来なかったのかと心配そうな声で言うた。

しかし、ふさこは『話したくない!!』と言うて一点張りになっていたから、ややケンカ越しになっていた。

「ふさこ…あんたこの頃どしたんで(どうしたのかな)…なんで学校を休み続けているのよ…一体、何があったのよ?」
「アタシ…アタシ修学旅行に行きたくない!!修学旅行に行きたくない!!」
「修学旅行に行きたくないって…あんたの行く班は決まっているのよ…」
「やかましいわね!!修学旅行に行きたくない!!」
「どうして行きたくないのよぉ?」
「おとーさんが修学旅行の費用を勝手に使った!!」
「えっ…修学旅行の費用を勝手に使った?」
「そうよ!!」
「ふさこ…それ、どういうことなの?」
「おとーさんね!!毎晩のように残業残業残業残業残業残業残業残業残業…残業と言っておいて、職場の新入りの職員さん6人の晩ごはんのお世話をしているのよ!!」
「新入りさんたちの晩ごはんのお世話?」
「そうよ!!新入りさんたちは『男子チュウボウに入るべからず』と親御さんから云われているから料理できないのよ!!」
「そんな…」
「おとーさんね!!アタシの修学旅行の費用を新入りさん6人と一緒に上司の知人のヤクザの親分の家に行って、花札をしていたのよ!!」
「それじゃあ、ふさこのおとーさんがふさこの修学旅行の費用を使って、ヤクザの家でバクチをしていた…と言うこと?」
「ええ、そうよ!!おとーさんが大学にいたときに、ヤクザの女と浮気していたことがあるから、そのことも関係しているのよ!!サイテーだわ!!…もういいでしょ…」

ふさこは、クラスのコにこう言うた後、泣きながら走り去った。

ところ変わって、ひでのりが勤務している千種区の区役所にて…

ひでのりは、この最近表情をしかめるようになっていたので、思うように仕事ができずに苦しんでいた。

毎晩のように、新入りの職員さんたちの晩ごはんのお世話で帰る時間が遅くなっていることを家族に言うことができないので、弱りきっていた。

この日も、課長さんから新入りさん6人の晩ごはんのお世話をしてほしいともうしわけない声で言われた。

「ひでのりさん…ちょっとかまんやろか?」
「課長、また今夜も新入りさんたちの晩ごはんのお世話をお願いしますですか…」
「ああ…ひでのりさんにもうしわけないと思っているよぅ…だけど、新入りさんたち6人は悪気があってひでのりさんのサイフをあてにしているわけじゃないのだよ。」
「悪気があって人のサイフをあてにしているわけじゃない…それはどういう意味ですか!?」
「ひでのりさんの怒る気持ちはよくわかるよぉ…せやけど新入りさんたち6人は、右も左も分からずに困っているのだよぉ~」
「ですから、課長は何を言おうとしているのですか!?」
「ひでのりさん…新入りさんたち6人は小さいときから『男子チュウボウに入るべからず』と親御さんから言われて育ってきたから料理ができないのだよ…」
「ふざけとんか!!殺すぞ!!」
「ああ…ひでのりさん…新入りさんたち6人をこらえてーな…この通り…負担かけた分は新入りさんたち6人のお給料が上がったらお礼をしなさいと言うてあるから、この通りたのむ…」

課長さんは、必死になってひでのりに新入りさんたち6人をせめないでくれとコンガンしていた。

ひでのりは、なげやりな表情で了承したので、課長さんは『今夜もお願いします。』と言うて席へ戻った。

その日の夜のことであった。

ところ変わって、栄にあるひつまぶしがおいしいと評判の居酒屋にて…

居酒屋の奥座敷のテーブルの上には、オードブルのセット料理とキリンラガービールの瓶100本とキリンレモンの瓶100本が置かれていた。

席には、新入りさんたち6人と課長がいた。

ひでのりは会計中であった。

新入りさんたち6人は、ものすごく言いにくい表情でこう言うた。

「なあ…」
「なんや…」
「オレたち…やりづれーよ…」
「ああ…そうだよな…」
「いくら多川さんが全額出してくれるというけれも、このままではダメになってしまうよ…」
「そうだな…」

新入りさんたち6人が口々に言うている中で、課長さんが泣きそうな声で彼らに言うた。

「おーいみんな…」
「(あつかましい声で)課長!!」
「おーい、みんなうれしい顔をしてくれよう…」
「あんたはふざけとんか!?ぼくたちの今の気持ちがゼンゼン分かっていないようだな!!」
「わかっているよぉ…」
「だったら、多川さんのサイフをあてにすることをやめてください!!」
「わかっているよぉ…」
「課長!!オレたちだって料理作りたいよ!!」
「わかったわかった…だけど、君たちが不慣れなことをして、ケガをしたりヤケドをしてしまったらどうするのだよぅ~」
「ふざけるなよバカ課長!!」
「あんたはおれたちになにを要求しているのだ!!」
「私は、君たちが同じ職場で長続きできるようにと思って、多川さんに無理を承知でお願いしたのだよ…」
「ふざけるなよ!!」
「分かった…怒らないでくれ…恩返ししたいのであれば、君たちが同じ職場で長続きして働いて行くことをアピールして行けばいいだけのことや…君たちがまじめに働いているところを多川さんにアピールすることが恩返しなのだよが…もうえかろが(もういいでしょ)…とにかく、楽しくお酒をのんで、明日からまたがんばって働きなさい!!わかっとんやったら返事しろ!!」

新入りさんたち6人は、課長の言葉を聞いてとりあえずは納得した。

このあと、彼らはお酒をのんで楽しいひとときを過ごしていたが、そんな中で恐ろしい悲劇に巻き込まれて行くのであった。

(ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!カンカンカンカンカン!!ギャー!!ギャー!!ギャー!!)

悲劇は、日付が変わって7月8日の深夜1時過ぎに発生した。

場所は、春岡通りにある住宅密集地にて…

住宅密集地にあるマンスリーアパートから火が出たので、キンリンの住民のみなさまが大パニックを起こして逃げ回っていた。

火元のマンスリーアパートは、新入りの職員さんたち6人が暮らしていたアパートであった。

火は瞬く間に地区に拡散していたので、危険な状態におちいった。

そんな中であった。

新入りの職員さんたち6人は、ひでのりが全額出してくれると思ってチョーシにのっていた。

だから、アルコール類を大量に注文した。

新入りの職員さんたち6人は、時間の感覚が完全にマヒしていたので、ラストオーダーの時間などおかまいなしになっていた。

時は、深夜3時半過ぎのことであった。

この時、ラストオーダーから20分過ぎていたのと同時に、閉店3分前になっていたので、店員さんがあつかましい表情で奥座敷にやって来た。

「すんまへん…お客さま…もうすぐ閉店時刻ですよ…お客さま…聞こえますか!?お客さま!!」
「寝たいねん…寝たいねん…」
「お客さま!!寝たいのだったら家に帰って寝てください!!」
「いやや…アパートは寝心地が悪い…」
「あんたらね!!ここはお店ですよ!!」
「なんねん、やかましいボケ!!」
「お客さま!!そんなことよりもあんたらが追加でオーダーしたのみものの料金はどうするのですか!?」
「えっ?」
「あんたたちね!!キリンラガービールの瓶1本500円を追加で1000本オーダーしたその上に、マッコリとハイボールと水割りの他にも50種類のアルコール類を大量にオーダーしたので、追加料金8555万7989円ですよ!!」
「オラオドレ!!」

(ガツーン!!ガツーン!!)

この時、新入りさんのひとりが店員さんの顔をグーで殴った。

「オラオドレ!!もういっぺん言ってみろ!!オレたちをグロウしやがって!!オドレはリーゼントの髪型で飲食店のバイトをしよんか!!オドレはどこの組のもんや!!」

新入りさんのひとりが店員さんを持っていたサバイバルナイフでズタズタに刺して殺した後、店内で刃物を振り回して暴れて、店にいた店員さんたちを殺して刺して逃げた。

事件を起こした新入りの職員の男6人は、居酒屋から逃げ出した後、付近の通りで通り魔事件を起こして、行方不明になった。

事件現場に、新入りさんの職員の証書が落ちていたことが原因で事件が発覚したので、区役所に名古屋と東京の報道機関の記者が大量に押しかけてきた。

区長の家にて…

家から出てきた区長に対して、報道機関の記者たちがシツヨウに取材攻勢をかけていたので、区長はひどくコンワクしていた。

区役所は、週明けから通常通りに業務はできたが、事態がシュウソクしていないので混乱はまだまだつづく。
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