~fault~私だけが・・・
~樹side~


「逃げられたな(笑)」
「笑い事じゃないよ。匠!」

後から笑いながら歩いてきた匠。


「わりィわりィ。でも心配いらねェよ。渉の言う通り何もないから。ただ・・」
「ただ?」
「しゃべる必要がないんだよ。今のアイツとは・・」

「必要ってなに?」
「必要は必要だろーが(笑)」


意味わかんねーよバカ匠!
俺の小さな変化に一番に気付いたのは匠。
しかもそれは小学3年生の遠足の時。

俺と匠と渉は同じクラスで遠足のバスの席も比較的近いところにいた。
クラスの中でもちょっと意地悪な健吾が渉をカラかっていた。
俺は気になってしかたがなくて何度も振り返って渉を見ていた。
それはもちろん匠も同じで何度も目が合って『どうする?』ってアイコンタクト。

でも渉は何も言い返さず黙っていた。
そしたら隣にいた美湖ちゃんが『先生~渉ちゃん気持ち悪いみたい』って言った。
健吾はやっぱりそれも面白がって『えーー吐くんじゃね?おい渉~吐くなよ~~』ってさっき以上にカラかいだして俺も匠も、え?って思っていた。

渉が乗り物酔いなんてしたことがないし、朝もみんなより元気で笑顔だったから。
その時、後ろの席にいた匠が席を立ったのを見て俺も慌てて斜め後ろにいた渉の足元に駆け寄ったら渉が小さく声にしたんだ。

『樹、、気持ち悪い』って。

急いでシートのポケットにあったビニールを口元に持っていたけど少し間に合わなくて
泣きながら俺に謝る渉を抱きしめた。

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