~fault~私だけが・・・
~匠side~


「優しそうな人だな」
「そうじゃなくて優しいの」
「ふ~~ん」
「興味ないなら聞くなバカ」

聞こえてきた話は待ち合わせをして今日も会う事、でも遅くなるから家に迎えに行くって言った笠間さんに、そうするって笑った渉。

「母さんもまた渉に会いたがってたよ。今度は一緒に料理しましょって」

その会話から渉が笠間さんの家に出入りしていることも想像がついてなんかモヤモヤした。
送りにも来るんだから迎えに来てもいい話。
普通のカップルがするような会話に、普通のカップルがとるようなスキンシップ。
どれをとっても誰が見ても幸せって感じ取れるふたり。
本当なら喜ぶべき事だし見守る準備も出来てたのに、いざこの時が来るとオレの心はざわついて見守るどころか渉から目が離せなくなってしまった。

あんなことがあった渉が男と付き合うってこと。
渉にとっては勇気が必要だったことは間違いがない。
でも笑顔の渉を見てたら本当に良かったって思う。

一緒に居すぎると感じなくなることは当たり前で、それは家族も同然になるから。
だからきっとオレだけじゃないはず、、、樹は違うけど(笑)
渉が女なんだって気付く、と言うか思い知らされるまでにかなり時間がかかった。
それは中学に入学した頃で「渉いいよな」とか「坪井のこと紹介してくんね?」とか「いつも一緒でいいよな」とかきっと4人が4人共そんな感じのことを言われることが多くなったんだと思う。
渉はいつも「あんたたちを紹介しろって周りがウルサイ!」ってプリプリしてたけどそんなのオレたちだって同じ。

渉が女なんだって思うようになったんだと思う。

オレの知ってる限りでは告白だってされたこともあるけど誰とも付き合ったことはない。
でもそんな渉が中学3年の時に2コ上の高校2年のヤツと付き合っていた。
とはいえ、その事を知るのはオレだけで、そのオレも知っていたわけではなくて思いもよらぬ最悪な出来事で知ってしまった。

いま思い出してもムカつく話。
オレは今でもアイツの事を許せずにいる。







< 23 / 93 >

この作品をシェア

pagetop