俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
男として騎士を続けながら、女として憧れの人に愛される。

そんな欲張りな夢を描いていると、騎士団長がニヤリと口角をつり上げた。

なにか謀をしていそうなその笑みは、前にも見たことがある。

この部屋に初めて通された日に、薬草オイルを塗って労わってくれた後、股が裂けるかと思うほどにきつい柔軟体操を強制された時だ。

女であることを知られた後は、アリスが戸惑うほどに優しくしてくれていたというのに、一体なにを企んでいるのか……。

「アリス」

「は、はい」

初めて本当の名で呼ばれ、鼓動が跳ねた。

「お前がどれだけ男でいられるか、試してやろう」

そう言った騎士団長は、一瞬でアリスの唇を奪った。

(キスされてる……!?)

驚きのあまり、顔を背けてしまったら、顎を鷲掴まれて顔を戻され、また唇を塞がれた。

(ま、待って。心の準備が……)

決して嫌ではないが、ウブなアリスには、大人しく身を任せる余裕はない。

騎士団長の胸を全力で押すと、少しだけ唇を離すことができた。

けれども悪人のように忍び笑う騎士団長は、楽しげだ。

「その程度の力で、拒んだつもりか?」

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