俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
アリスが目を瞬かせている間に、頬の赤みを消した騎士団長が、口の端を上げる。

「そんなふうに女の顔をするな。危うく止められないところだった。これは特訓が必要なようだ」

「特訓!?」

「先に食堂に行ってる。時間を置いて、お前も来い」

それだけ言うと、騎士団長は部屋を出て行ってしまった。

長椅子に寝そべったままのアリスは、特訓という言葉に不安を覚えつつ、今のキスは完全にからかいだったと悔しく思う。

(ロイ騎士団長は、やっぱり意地悪……)

気づけば、窓の外はすっかり夜の様相で、テーブル上のランプが入室時より明るく感じられた。

ゆらめく明かりの中で、アリスはゆっくりと身を起こす。

外されたボタンを見て、恥ずかしさが再燃し、頬を熱くした。

(私を渡したくないという言葉には、どれくらいの愛情が込められていたのかな。あんなふうにからかってくるんだもの、期待してはいけないのかも……)

モソモソとボタンを閉め、この恋心が加速しないようにと自分を戒めるアリスであった。


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