俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
けれども膝に乗せられたのは今日が初めてで、アリスは緊張して体をこわばらせ、恋に走り出しそうな想いと闘っている。

(胸がドキドキして苦しい。勉強しないといけないのに、騎士団長のことで頭がいっぱいになる……)

「ほら、三十五ページ目の最初から読め」

「は、はい。騎士たる者、いかなる状況においても心を乱さぬために、日頃より精神を鍛え……ああっ」

アリスの腹部に触れていた騎士団長の手が、太腿へと移動した。

内ももをゆっくりと撫でるから、アリスはゾクゾクと体を震わせ、女のように甘く呻いてしまう。

そんな自分の反応に恥ずかしくなり、暴挙を働く大きな手を、上から掴んで止めた。

「騎士団長、許してください。これ以上触られたら、私――」

「“私”? 女口調になっているぞ」

「すみません! 僕は、ええと、その……あっ」

「心を乱さぬよう、日頃より精神を鍛えよ。それが二十六条に書いてある教えだ。実践してみせろ。男を貫け。俺に触れられたくらいで色のある声を出すな」

忍び笑う声がアリスの頬にかかる。

男であり続けろと命じておきながら、騎士団長は誘うように「アリス」と甘く呼びかける。

首筋に唇をあてられて、アリスは吐息を漏らした。
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