俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~

「わた、僕……ああっ、私……」

「女になるなと言ったろ」

顎先をつままれて、顔を横に向けられた。

楽しげに弧を描く艶めいた瞳に、拳ひとつ分もない距離で見つめられ、アリスの心臓は爆発しそうに波打つ。

(キスをされたら、男じゃいられない。女に戻ってしまうから、お願いやめて……やめて、ほしくない。ロイ騎士団長が、好き……)

騎士団長の色気に惑わされてしまったアリスが、目を閉じて唇を奪われる瞬間を待とうとしたら……ノックもなく、突然ドアが開けられた。

弾かれるようにドアに振り向けば、医師長が入ってこようとしていた。

「エドガー、話があるんだけど……ん?」

片足を踏み入れてピタリと止まった医師長は、青い瞳を瞬かせる。

驚いてはいるようだが、それほどではなく、「ああ。特訓中ね」と納得してニコリとした。

「鍵は閉めた方がいいんじゃないか? 邪魔したね。話は明日にするよ」

そう言ってドアを閉めようとしているから、アリスは大慌てで引き止める。

「待ってください。行かないでください。これ以上されたら、僕の心臓が持ちません!」

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