俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
これでは一家七人が暮らしていけないため、一番上の兄は町に出稼ぎに行き、ふたりの弟は村で馬貸しの仕事をしている。

その馬貸しも、二十頭いる村長の馬を預かっての商いであるため、収益の七割を持っていかれてしまうのだ。

自宅までの細道を行くアリスは、長い影を引きずりながら独り言を言う。

「あーあ、今日も一日が野良仕事で終わった。体を動かすのは好きだけど、草刈りばかりは飽きるのよね。お兄ちゃんみたいに、町に出稼ぎに行けたらいいのに……」

クランマー伯爵の館がある町で、長兄は大工の仕事をしている。

貯めた給金を持ってたまに帰ってくると、町での暮らしぶりを話してくれた。

洒落た洋服や帽子を売る店に、大きな靴屋に本屋、アクセサリー店と時計屋もあって、パンは自分で焼かなくても、いつでも焼き立てのものが店にたくさん並んでいるという。

芝居小屋まであるというから、小さな雑貨屋と教会があるだけのこの村とは大違いだ。

小さな頃から好奇心旺盛なアリスにとって、町の暮らしは羨ましい限りだが、長兄が言うには、クランマー伯爵領の町もちっぽけなのだそう。

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