俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
「僕はわけあって行くところがないんです。雑用でもなんでもしますから、騎士団に置いてください。お願いします!」

「やめろ、放せ」

「嫌です。いいと言ってくれるまで、絶対に放しません!」

腕に力を込めて縋りつけば、周囲の騎士たちに失笑された。

アリスとしては頼みの綱を切らすまいと必死なのだが、事情を知らぬ者たちにすれば、駄々をこねる子供のように見えるのかもしれない。

「笑うな」

騎士団長が低い声で諌めると、ピタリと静まる。

こういう組織は上下関係が厳しいのだろう。

和気あいあいとした雰囲気は不必要なようだ。

「お前、名は?」

「アリ……アリュース・ウッド、十五歳です。コックス村から来ました」

「ウッド姓の者は複数名いるから、今後、お前のことはアリュースと呼ぶ」

「えっ……?」

“今後”という言葉に、胸が高鳴る。

消えかけていた希望の光が戻ってきたような心持ちで、アリスは騎士団長を見上げた。

冷たそうな印象もする美麗な口元が、ニヤリとつり上がる。

< 23 / 228 >

この作品をシェア

pagetop