俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
ましてや従騎士見習いという立場のアリスは、蹴られたって「すみません」と謝り、筋肉がプルプルと震える細腕を必死に屈伸させるしかないのだ。

(思ってたのと違う。まさかこんなに厳しいなんて……)

騎士団は、国境を守り数万の人員がいるという軍隊とは別組織で、王都の治安維持と王族の護衛が仕事である。

従騎士たちは、正騎士の指導のもとで任務に当たるが、見習いのアリスは朝から晩まで訓練の毎日だ。

剣術や馬術の稽古なら面白みも感じられそうなのに、筋力トレーニングと走り込みばかりで、腕も足もお腹も全身の筋肉が悲鳴を上げている。

寝床があり、三食出されて、立派な騎士服を着ることができても、道を間違えた気がし始めていた。

(農作業よりずっとキツイ。この訓練、いつまで続くの? もう限界……)

つい恨みがましい目でグレンを見てしまったら、手を踏まれた。

「痛っ……」

「なんだ、その反抗的な目は。訓練メニューはロイ騎士団長が決めているんだ。文句がありそうな顔をしていたと報告してやろうか?」

見目麗しい騎士団長の顔を思い出し、アリスの眉間に皺が寄った。

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