俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
バレたら退団させられるだけでは済まず、牢に入れられると知り心の中で焦っていたアリスだが、冷や汗が流れた理由はそれだけではなかった。

『まともに読み書きできなかったのか。計算はできるか?』

『百までなら数えられます』

『その程度か……。毎日、二十三時にここへ通え。一時間だけ勉強を教えてやる。指令書も読めない奴に、騎士は務まらないぞ』

(そんな遅い時間じゃなきゃ駄目なの? 勉強を教えてくれるのはありがたいけど、睡眠不足になる……)

パトリックが羨ましがった騎士団長直々の夜間の個人指導とは、そのようなことである。

できるなら代わってほしいとアリスが思っていたら、笛が鳴った。

相手を替え、また十分間、一対一の戦いの訓練だ。

パトリックは他の従騎士に声をかけられて、アリスから離れていき、アリスは自分の相手を探す。

けれども、見渡した限りみんながペアを組んでおり、余っている者がいなかった。

周囲で激しい戦いが繰り広げられる中を縫って進み、アリスは指導役の上官に声をかける。

「すみません、僕の相手がいないんです」

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