俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
それはなぜかと言うと、本の背表紙の文字は外国語ではなく、コルドニア王国の公用語であったからだ。

アリスは貧しさから学校に通わせてもらえなかったが、読み書きはできる。

とは言っても簡単な文章のみで、大人向けの本を読むことはできない。

母国語だと指摘され、『読めないのか?』と眉をひそめられたアリスは、苦笑しつつ、そのような事情を説明した。

酒場の裏手で見た騎士団員募集の張り紙も、読めたのは入団試験を受ける資格や日付くらいであろうか。

その下に細かな字で長々と書かれていた注意事項は、難しそうなので無視してしまった。

それも正直に打ち明けると、険しい顔をした騎士団長が、執務机の引き出しからアリスが見たものと同じ張り紙を出してきた。

アリスが無視した文章を読んでくれたのだが、申告が嘘だったと判明した場合は禁固刑に処すると言われ、アリスはギクリとさせられた。

申告とは、入団試験の前に聞かれた、氏名、年齢、性別、出身地のことだろう。

アリスは、そのうちの出身地以外を偽っていた。

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