シンフォニー ~樹
38

納骨の後、相続の相談をしていた父と智くんは、思いがけないことを 顧問弁護士から聞く。


元々、仲の良い兄弟だから。

遺産争いに なるわけはなかったけれど だからお祖父様の財産さえ 把握していなかった。
 

「お父様は お二人に等分になるように 遺言書と目録を 作っておかれました。」

驚いて 顔を見合わせた二人。


遺言書を 作成した日にちは 亡くなる半年前。
 


「親父。どこまでも 俺達の手を 煩わせないで。」

父は、込み上げる涙を抑える。
 
「俺達、まだ 頼りないかな。」

と智くんも目頭を押さえた。


莫大な財産の 相続税のため売却する不動産まで 目録に記されていた。
 

「二人がかりでも、親父には 敵わないな。」

と顔を見合わせる兄弟。

お祖父様の深い愛情が 兄弟の絆を さらに強くする。
 


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