シンフォニー ~樹

絵里加達は 結婚式の準備もあり 休日も 忙しく動いているようだった。
 

「絵里ちゃん あの振袖を 結婚式に着るんだって。なんか感激しちゃうわ。」

母が言う。
 
「へえ。花嫁衣裳っぽくないけど。」

意外に思って樹が言うと、
 
「今、仕立て直しているのよ。結婚式でも着られるように。」

お祖母様も 嬉しそうに言う。


絵里加の 思いやりには やっぱり感動してしまう。


だけど それ以上の気持ちが湧かないことに 樹は自分でも驚いていた。
 


「恭子ちゃんも、可愛い花嫁さんになるだろうなあ。」

絵里加の代わりのように 母は恭子を待っている。
 

5月の旅行以来 週末は 樹の家に 泊まるようになった恭子。

両親もお祖父様達も 素直な性格の恭子を 絵里加と同じように 可愛いと思っていた。
 

「明日は、恭子来るよ。」樹が言うと、
 
「本当に可愛いのよ、恭子ちゃん。よく樹を好きになってくれたわ。」

母は樹に言う。
 
「失礼だな。自分の息子に。」

樹は苦笑して言う。


恭子が 可愛くてたまらないのは 母より俺だよ と思いながら。



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