如月くんは私をひとりじめしたい
如月くんの顔は絶望に満ち溢れていた。
でも、悲しみもあった。
実の母親に誕生日を覚えてもらえていなかったなんて、事実を受け入れたくなかったのだろう。
「あんたは……!!」
「さっさと結婚してこの家を出ていって頂戴。紫苑がいるせいでここに住めないんだから」
如月くんは言葉を失ったように呆然と立ち尽くしていた。
さすがにそれは酷いよ。
なにか言い返してやりたかった。
だけど、何を言ったらいいか分からなかった。
お母さんが出ていくと、如月くんは床に座り込んだ。
「最低な親だよね。出来ることなら僕だってこんな家、出ていきたいよ。でもさ、お父さんとの思い出はどうするの?あいつはお父さんとの思い出ごと、僕を消したいんだ。そんな奴なんだよ」
それは悲しかったからなのかもしれないね。
お父さんと如月くんが大好きだったからこそ忘れたかったんじゃない?
思い出すだけで胸が張り裂けそうで、悲しみの淵に立つのが怖くて、如月くんと思い出を捨てちゃったんじゃないのかな。
そう言いたかったけど、如月くんの気持ちを考えると言えなかった。