松菱くんのご執心
「なんかすっごく噂になってたよ〜」
真結ちゃんはパフェをぱくぱく食べながら言う。
「なんの事だかさっぱり」
「分かってる癖に〜。二人って知り合いだったの? いつから? もーう! 教えてよお、そういう事」
二人で行った有名アイドルグループのライブが終わった後よりも、興奮冷めやらずといったふうだ。
顔を真っ赤にして興味津々に聞いてくる。
「真結ちゃんが昨日の放課後帰った後にちょっと喋っただけ。そのレベルの知り合い」
「やだ、わたし、恋のキューピットになってたってわけ」
いやいや、そういう関係じゃない、と否定するより先に真結ちゃんは
「あ、そういえばお昼に、早瀬くんがみさかちゃんを探し回ってたよ。会えた?」と首を傾げた。
「もしかして、屋上にいるって爽に教えたの真結ちゃんなの!?」
わたしはすくい上げたパフェを危うく落としかけた。
「そう。『みかさちゃんなら、松菱くんと屋上に行ったよ』って教えてあげた。
いや、だってね早瀬くんが凄い形相で、わたしの肩をぐわんぐわん揺すって聞いてくるんだもん」