松菱くんのご執心
しかし、わたしは聞くべきことを聞くことにした。
「それはこっちの台詞なんだけど。なんで松菱くんにあんなこと言っちゃったの」
「………だから、さっきも言ったけど、駄目なんだって。あいつだけは。みかさ、知らないの?」
「知らないって何を?」
私は首を傾げる。
「あいつ……つい最近、少年院から出てきたばっかりなんだよ。そんな危ないやつに近づいたってろくなことは無いよ」
「危ないかなあ」
爽が、はあとため息をつく。
「そんなに呑気でよく生きてこれたね。みかさに何かあったら、俺………」
「何よ、大袈裟な」
それに松菱くんと話していても悪い人には思えなかったし
「そりゃあ、暴力は一般的には許してはいけない行為だと思う。でも、彼はわたしの隣の席のだから」
「それ、関係ある?」
爽は釈然としないようで、「もっとちゃんと考えた方がいいよ」と諭すように言った。
「分かった。じゃあこうしよう、何かやばい事にわたしが巻き込まれたら、ちゃんと爽に相談する」
「巻き込まれた後だったら遅いんだって」と言いながらも、ちゃんと俺に言えよと最後は折れてくれた。