松菱くんのご執心



「自信がなくてもいいんじゃないかな? 

むしろ、痛みを知って、次は自分が加害者になってしまうことを誰よりも恐れてる。

それがたぶん、大事なんだと思う。

……これはさ、私だけかもしれないんだけど。
心配して、どうしようどうしようって悩んでることに限って、案外大丈夫だったりするんだよ。

逆に自信満々の時こそ要注意」



 松菱くんはじっと、わたしの顔を見る。



何かおかしかったかな?



 わたしも首をかしげながら見つめ返す。
近所の小学生が虫を観察しながら、よくそういう顔をしていたなと思った。



 なんだこれ、初めて見る虫だ。なんて考えていたのだろうか。
まさに、わたしはそのときの虫になった気分だ。



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