松菱くんのご執心




────その日は、もう四限だと言うのに松菱くんは学校へ来ていなかった。



また、隣の席がぽっかり主を失ってしょげてる様に見えた。




ここ一週間ほど、三限目までには顔くらいは出していたのに。まだ来ていないなんて、どうしたのだろう。




また、喧嘩してるのかな、とか色々考えたらいてもたっても居られなくなった。





「あの、松菱くんって今日来てませんけど、何か御存知ですか?」



わたしは担任へ声をかけた。
ちょうど四限目が担任の教科で、授業が終わるとすぐに引き留めた。



「何も連絡が入ってないけど。まあ、それもいつもの事だしね。松菱がどうかしたのか?」



「ああ、いえ。ここ一週間ほど毎日来てたんで、ちょっと気になって」


「ほう………そうか、それなら松菱に渡してもらいたい物があるから、届けてもらってもいいかな」



なんとも様子を見に行く口実が出来た。



任せてください、と意気揚々その申し出を引き受けて、
わたしは松菱くんの家へ向かっているのだけれど、



手元にあるファイルを見て、これはなんだか小学生みたいだと思った。



お休みしたクラスメイトに、その日渡された大事なプリント類をお家へ届ける。



でも、わたしが渡されたクリアファイルから透けて見えたプリントは………



どう見ても緊急性の欠けらも無い保健だよりただ一枚だった。






………ところで、松菱くんは家にいるのかな。



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