松菱くんのご執心
「ここか」
松菱くんの家はグレーの外壁に、二階にはバルコニーのついた一軒家だった。
インターホンを押す。「はい」と男の人が返事したが、松菱くんの声ではなかった。
「松菱くんと同じクラスの白羽根と申します」
「ちょっと待ってろよ」
とまた別の男の人がインターホン越しに話した。
「ええっ」人が急に変わったと驚く。
松菱くんの家族構成に疑問を抱いているうちに、玄関が開いた。
「こんにちは、えっと、秀一くんの彼女さんですか?」若い男の人が出てきた。
単刀直入にそう聞いた。
とても爽やかな青年といった容姿で松菱くん同様、綺麗な顔立ちだったが、二人は似ていない。
最初にインターホンに出たのはこの人で間違いなさそうだ。
「いえ、友達です」
わたしは首を振って
「プリント、届けに来たんです」と封筒を渡した。
「それはどうも、ありがとうございます」