松菱くんのご執心



「ここか」


 松菱くんの家はグレーの外壁に、二階にはバルコニーのついた一軒家だった。



 インターホンを押す。「はい」と男の人が返事したが、松菱くんの声ではなかった。



「松菱くんと同じクラスの白羽根と申します」


「ちょっと待ってろよ」


とまた別の男の人がインターホン越しに話した。

「ええっ」人が急に変わったと驚く。



 松菱くんの家族構成に疑問を抱いているうちに、玄関が開いた。



「こんにちは、えっと、秀一くんの彼女さんですか?」若い男の人が出てきた。



単刀直入にそう聞いた。



とても爽やかな青年といった容姿で松菱くん同様、綺麗な顔立ちだったが、二人は似ていない。


最初にインターホンに出たのはこの人で間違いなさそうだ。



「いえ、友達です」


わたしは首を振って


「プリント、届けに来たんです」と封筒を渡した。



「それはどうも、ありがとうございます」


< 17 / 148 >

この作品をシェア

pagetop