松菱くんのご執心
「いや、大丈夫だ。もう熱もないと思う」


「よく言うよ、わたしの目は誤魔化せないわよ……」


手を松菱くんのおでこにあてる。


「み、みかさ?」少し掠れた声で松菱くんは言う。



触れた部分からじんわりと熱が伝わってきた。


「やっぱり、熱。あるじゃない」


体温計で測るまでもなく松菱くんのおでこは熱かった。


熱冷ましの濡れタオルをおでこに乗せるなり、なんなりした方が良さそうだ。



「タオルってどこにある?」


「洗面所に積んであるけど……」


「じゃあ、それ使わせてもらうね」



家捜しするみたいで気が引けたが、やむを得ないと割り切るしかない。


わたしは部屋を出て、洗面所のタオルを一枚拝借し、ついでに洗面器も借りて部屋へ戻った。


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